SCENERY

その壁がなくなれば、世界がもっと広がります 

2010.02.23[火] 牛のA

先日、ちょっと面白い本を読んだ。
原題は『A is for Ox.(牛のA)』、邦題『本が死ぬところ暴力が
生まれる』(バリー・サンダース著/杉本卓 訳)
というもの。

例えば漢字を説明する時「岡山の『岡』に田んぼの『田』です」
などという表現を使うことがあると思う。
アルファベットでも当然同じ事があり、業界や企業によっても
異なるだろうが、昔、私がいた業界では、「A is for Alfa(Able),
B is for Bravo(Baker), C is for Charley‥」などと表現する。

最初にタイトルを見たとき、なぜOx(牛)なのだろう?と、条件
反射的にアルファベット26文字を全て数え直してしまった。
長年の習性というのは恐ろしい。(笑)
本を読み始めると、すぐにその答えは判明するのだけれど、
サブタイトルの「電子メディア時代における人間性の崩壊」と
どういう関係があるのか、さっぱり。(笑)

サンダースは、識字が自己の形成にとっていかに重要かという
ような事を述べているのだが、本を読みながら、識字と自己の
繋がりを考える以前に、様々な事を思い出してしまった。
本の主題とは少し離れてしまうが、若かりし頃の思い出などを
交えながら、感想など。

義務教育を終えて、高校生となった最初の世界史の授業で、
担当の教諭が衝撃的な事を言った。
「人を人たらしめたものは何か?」
「年号を無意味に暗記するな。何故そうなったかを考えろ。
歴史には必ず理由がある。時系列に考えれば年号は自ずと頭に入る」

15歳やそこらで、いきなり「歴史がおこった理由を考えろ」とか
言われて、中学までの授業と全然違う~!なんて。
それからというもの、この「人を人たらしめたもの」というのは
解るようで解らない、自分自身にとっての難解なテーマとなって
しまった。

当時のクラスメイトたちの意見をまとめると
1)火を使う
2)二本足歩行を行う
3)言葉を使って意志の疎通を行う
代表的なものが、この3つだったと思う。


本書の中では「口承文化」と「識字文化」についてが述べられて
いる。もしかしたら、この中にその答えのヒントになるものが
見つかるかもしれないという期待が芽生える。
サンダースの言葉を借りると『世界で現在話されている約3000の
言語のうち、約78言語だけが文学をもっている』とある。
78の言語のうちの一つが日本語であるということは、非常に
ラッキーで有り難いことだ、と嬉しくなる。

そう言えば、以前読んだ『我々は何処から来たのか―グレート
ジャーニー全記録』(関野吉晴 著)
に出てくる民族で、
やはり識字を持っていないだろうと思われる人々がいた。
彼らは、個々を識別する個人の名前を持たない。数を数える時も
「1、2、3、たくさん」となる。
それ以上の数を知る必要がないようだ。
つまり、個々を識別できれば、名前という記号を付ける必要が
ないのだろうと思われるし、物を蓄えるという習慣がなければ
果てしない数を数える必要もないようなのだ。

彼らの生活が文化的か、と問われれば、どちらかといえば
あまり文化的とは言えないだろう。しかし、それが不幸か、と
問われれば、私にはよく解らないのだ。

そして、私のお気に入りの作家、イサク・ディーネセン。
彼女の作品「Out of Africa」の中で、彼女はアフリカ原住民
のために学校を設立する。
文字を教え、彼らのために教育を試みるのだ。確かに、識字と
いう事実によって、生活は劇的に変化すると思う。しかし、
彼女の親しい友人のデニスは、自分の価値観を彼ら(原住民)に
押しつけるのはどうか、と問いただしている。

文明と文化、そして自己の形成。
電子メディアが子どもたちの人間性を崩壊するのか、それとも
崩壊されているのは、本当は大人たちなのか。
もしかしたら子ども以前に、実は大人の方が何らかの影響を
受けているのではないか、と思わずにはいられない。

この本の中の心に残った文章を一つ。
「文学は、最短距離 -直線- が必ずしも最大の喜びをもたらさ
ないということを教えてくれる。良い物語は、踏みならされた
道からあちこち踏み外して寄り道させる。(本文より引用)」

人生もまたしかり。

とりとめのない書き散らかしたような文章になってしまったが
昨年、名古屋ボストン美術館で見たゴーギャンの代表作のタイトル
でもあり、関野吉晴氏のグレートジャーニー全記録Ⅱのサブ
タイトルにもなっている言葉を最後に。

『我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々は何処へ行くのか』

「牛のA」から始まった文化は、かなり奥が深い。

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Comment
2010.02.23 Tue 21:54  ATOMA #-
ああ!懐かしい響き。。。
ジュリエット~フロリダ~ツー~オスカー~オスカー~アルファー~はるか昔、アマチュア無線なんてものやっていた頃の名前です。航空関係から来てたんですかね?っていうか、無線系の決まりごとなんですよね~?


おお!  [URL] [Edit]
2010.02.25 Thu 00:37  say #54eKsoAw
>ATOMAさん
そうですね、多分、航空関係というよりも船舶スタートだと
思います。
正式には「NATOフォネティックコード」と言うようですが
業界独自の言い方がありました。
某鉄道関係の会社では「アメリカ、ボストン‥」と言って
いたので、「おおっ!」と驚いた覚えがあります。(笑)

でも「AがOx」と言うのは面白いですよね。
フェニキア語から来ているようです。
一文字で意味を持つのは、世界中で漢字だけだと思って
いたので、衝撃的でした。
26文字、全部知りたくてウズウズ。
Re: おお!  [URL] [Edit]







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